大変長らくお待たせをいたしました。新年度になり、ようやく大道具ブログを更新いたします(汗)
いくつかの現場のレポートをしていたのですが、結局アップできずに、ここまでかかってしまいました。楽しみにしておられた方々すみませんでした。
それでは気を取り直して早速いきまーす!
4月5日から7日まで北九州芸術劇場にて市政50周年を記念する邦友会の邦舞名流選 舞踊公演の大道具と照明を任せていただきました。
邦友会さんは北九州市内の邦舞邦楽界各流各派の皆さんが北九州市の文化発展向上の為に流派の垣根を越えて長年頑張っておられます。
今年も藤間、花柳、西川、勝美の四流派の師匠たちが日本舞踊の素晴らしい競演を繰り広げられました。
邦友会の師匠たちは日本舞踊にかける強い思いを皆さんがお持ちですので、大道具や照明にも、しっかりとこだわられます。昨年から何度となく打ち合わせを繰り返し、ようやく本番を迎えることが出来ました。
今回は特に大道具のきっかけもの(普通きっかけとは物事が動きだす原因や動機などを言いますが、道具の世界では曲や芝居の途中でセットが動いたり、転換したりすることも含めてこう呼んでいます)が多かったので、いくつかご紹介したいと思います。
先ずは常磐津の独楽です。この曲は浅草観世音の境内で独楽売りが独楽回しの大道芸を披露しているのですが終いには己自身が独楽になり刀の上で回りだすという大変面白い舞踊です。
大道具は最初の境内の場面から刃渡りの場面に転換します。巨大な刀の奥には立ち方(踊り手)が上る台が仕込まれていて、その台の中心に直径3尺(約90センチ)ほどの円が切り込まれています。その円を後ろから大道具さんがロープを引いて廻します。まぁ小さな回り舞台ですね。立ち方が乗った円をきっかけでゆっくりと廻しだすのも結構神経を使う作業です。
次は新邦楽の露です。この曲は夜の間に生まれた露が葉っぱの上で舞い遊びますが朝日と共に消えてしまうという少し、はかない踊りです。
今回の大道具と照明は露の世界をより美しく表現するために日本舞踊と言うよりは、あえてバレエの舞台のようにしています。セットの葉っぱの一枚一枚を大道具さんが裏に入って持ち、露の精を取り囲むように動き回ります。動かし方も入念にリハーサルを繰り返しスピードや動き出しの調整をしました。とても幻想的な舞台になったのではないでしょうか。
最後は常磐津の松の羽衣です。この曲は皆さんご存知だと思いますが三保の松原の天女の羽衣伝説です。羽衣を見つけた男と天女のやり取りを見どころの多い舞踊にしています。
大道具は基本的には羽衣が掛かっていた松だけなのですが、最後に天女が天上へ飛び去っていくのを表現するために舞台奥の大迫内にカスミ(雲のようなもの)の台を仕込み、台の上面が舞台の高さと同じ位置まで大迫を沈めておきます。天女が奥の台に乗り移ると大迫を上げていきます。大迫が舞台面まで上がると今度は大道具さんが人力で車が付いた台を下手の袖中まで押していって天女が消えていったという事になるわけです。
まだまだ他にも紹介したい番組や大道具の事がたくさんあったのですが、長くなりすぎましたのでここまでにします。
邦友会のみなさん、本当におつかれさまでした。素晴らしい会をぜひいつまでも続けてください。よろしくお願いしまーす。