9月8日の日曜日、福岡市民会館大ホールに於いて「福岡藤盛会」の舞踊公演が開催されました。週末はあいにくの天気が続いておりましたが、この日は今年初めてと言って良い秋晴れに恵まれ、10時間半にも及ぶ長丁場でしたが最後まで大勢のお客さんが詰めかけ大盛況のうちに幕を閉じました。
「藤盛会」は昭和41年に「福岡藤間会」として結成され長く福岡市の文化発展に力を注がれていましたが、六世藤間勘右衛門 現家元の襲名後に「福岡藤盛会」として新たに発足され歌舞伎舞踊の流派として伝統を継承するとともに新しい方向を目指して活動されています。
さて、今回の投稿ですが、詳細を報告させていただくには演目がたくさん有り過ぎまして、大道具の転換説明など一部のご紹介になっております。また中年親父もカナヅチを持って真剣に働いておりましたので演目全ては撮影出来ず、撮った写真もいつも以上にひどいものが多いので、「写りが悪い!」とか「後ろを向いとる」とか「私は写っとらん!!」とか、お怒りになられませんように、各師匠の皆様くれぐれもお願いいたします(苦笑)
先ずは長唄の「松風」です。能の「松風」を題材としたもので舞踊では「汐汲」として踊られることも多いようです。都へ帰ってしまった在原行平(ありわらのゆきひら)の面影を海女の松風が慕い偲ぶ舞踊です。今回は松風が行平の形見の烏帽子・狩衣を波に浮かべ波間に流されていくという演出をお願いされたので、波の絵が書き込まれた波布と呼ぶ間口いっぱいの大きな布を正面の松の切出しの奥に綺麗に折りたたんで仕込み上手の袖より大道具さん達がゆっくりゆっくりと袖側に引き込んで潮の動きを表現してみました。
次は長唄の「羽衣抄」です。この曲は以前ご紹介した常磐津の「松の羽衣」と同じく羽衣伝説を題材にされた舞踊です。今回は天女が舞い降りてくるところと天に舞い上がる場面を舞台奥の迫に仕込んだ台を昇降させ同時に雲の切出しを開閉する事によって表現しました。天女の踊りの振りと大道具の動き出すタイミングが大切でした。
この他にも、今回は曲の途中に舞台を転換したり、迫を昇降させる演目がたくさんあったので、かなり神経を使いました。舞台演出を成功させることはもちろんですが、立ち方は一生懸命踊られているので、周りの私たちスタッフが絶対に事故が起きないように細心の注意を払い、一瞬の油断もしてはいけないからです。
最後に「福岡藤盛会」の皆様、本当にお疲れ様でした。年々この様な立派な舞踊会が開催されることが少なくなってきております。福岡から九州、いや全国に伝統文化の新しい道筋を発信していただけるよう「福岡藤盛会」のご活躍ご発展を舞台裏からお祈り申し上げます。