絵描きさん達がドロップ(背景幕)の直しをしていたので紹介します。
今回直しているのは歌舞伎や日本舞踊の発表会でも良く見る機会が有ると思いますが吉原の仲の町です。
昨年放送されていたお医者さんが江戸時代へタイムスリップするドラマの中でも何度か登場していたので見覚えが有るんではないでしょうか?花魁がしゃなりしゃなりと歩を進めていた吉原遊郭のメインストリートを正面から見た図柄です。
ドロップの絵の部分のサイズは高さが15尺、間口が9間位あります。あっそうそう舞台では未だメートル法ではなく昔ながらの尺貫法が幅を利かせているんですよ。1尺と言うのはおよそ30センチくらいですから15尺だと4.5メートルくらいですね。1間と言うのは6尺の事で9間だと16メートル位と言う事です。絵の上には黒布が3尺から6尺の高さで間口いっぱい縫製されていてその黒布部分の上部に私たちがチヒモと呼ぶひもが1尺間隔位で縫いつけてあります。
このチヒモで舞台を昇降する美術バトン(パイプ)に結び付けていきドロップが吊り下げられるんです。
日本舞踊は基本的には大道具のセットが高さ15尺、間口が8間の中で飾られるように決まっています。ですからドロップの絵も15尺までしか描かれてなくその上の黒布は結んだ美術バトンが前の方の客席から直接見えないようにするために付けられています。間口が8間より広いのも同じ理由です。(バレエやオペラ等のセットサイズは全然違います、これはまたいつかお話します)
絵描きさんというタイトルからだいぶ横にそれましたね。現在、前原舞台総合研究所には5人の絵描きさんがいて、博多座のセットはもちろん日舞やバレエ、芝居の大道具の絵を描いています。椅子に座ってキャンパスに向かう様な普通の絵描きさんとは違って、絵を描く対象物がすっごくデカイですからまずは体力勝負ですね。ドロップの下地塗りをするときなんかはどう見たって田植え以上にしんどいのではないかと思います。しかし体力だけではいけません。御殿の襖絵等日本画としてしっかりと描ける繊細さも必要だし、とにかく絵の描き方や方法が歌舞伎やバレエ、お芝居等ジャンルによって全く違うので一人前の絵描きさんになるのは本当に大変ですよ!